台湾の先住民族、平埔族グループの言語はユネスコ(国連教育科学文化機関)の消滅危機言語とされている。平埔族グループとは、蘭陽平原、東北角(以上、台湾北東部・宜蘭県)、北海岸(同北部・基隆市)、台北盆地(同北部・台北市)、西部海岸の平野部で台南から、高雄、屏東(以上、台湾南部)にかけての一帯に分布するオーストロネシア語族の一つ。9つ程度の民族が平埔族グループとされる。
行政院(内閣)は今年9月、「原住民身分法」の改正案を承認し、「平埔原住民」を先住民族の身分に加え、平埔族グループの人たちの先住民族としての身分を法律面から保障することにした。一方で「原住民族委員会」(先住民族委員会、日本の省レベルに相当)は平埔族の人たちに自らの母語を守る意識を持ってもらうため、「平埔族言語復興計画」を実行。同計画を通じて、平埔族グループの各民族にそれぞれの特性に合わせた母語復興計画を立てさせると共に、その執行を後押ししている。
今年度の「平埔族言語復興計画」は、南投県(台湾中部)、花蓮県(同東部)、苗栗県(同北西部)、台南市(同南部)の4県・市における平埔族の11団体が対象。民族別では噶哈巫(Kaxabu)族が1団体、道卡斯(Taokas)族が1団体、巴宰(Pazeh)族が2団体、西拉雅(Siraya)族が7団体で、昨年と比べて3団体増えた。
「平埔族言語復興計画」の執行項目は教師の育成、教材の編纂、生活会話クラス、教会学習クラスの実施など。平埔族言語の教師を育成すると共に、各民族の母語が持つ文化の属性や居住地域などの環境にマッチした、面白みと知識、文化的要素を持つ教材の編纂をサポートする。それにより、学習者が気負わず自然に自らの母語を学び、アルファベットでの表記も熟知できる環境を整える。
また、各小中学校の先住民族言語教育を支援するスタッフについて先住民族委員会は学校までの交通費の他、それぞれの特殊な取り組みに応じた補助を行う。こうした特殊な取り組みには、先住民族語で生活する家庭、集落での母語によるラジオ放送、親子での母語学習、母語を使ったキャンプなどがあり、母語の使用やその伝承の機会を増やしている。